明石て嬉しく 舞子の千鳥 闇に須磨して 淡路島 |
あの虫は 粋な虫だよ 蛍じゃないか 忍ぶ恋路の 道ちょ照らす |
井戸の蛙と そしらばそしれ 花も散りこむ 月も見る |
色が黒うて惚れ手がなけりゃ 山の鴉は後家ばかり |
蛙鳴くさへ 恨みのあるに まして寝覚めの 時鳥 |
嫌なお客の乙鳥は帰し 好いたお方の雁を呼ぶ |
きりぎりす 粋な小声で一足とめて 手を出しゃ木陰に隠りゃ |
来てはくだまく小雀さえも ささの上ならにくかない |
來てはちらちら思はせ振りな 今日も止らぬ秋の蝶 |
来るはずの人は 来ないで蛍がひとつ 風に追われて 蚊帳のすそ |
恋に焦がれて鳴く蝉よりも 鳴かぬ蛍が身を焦がす |
言葉のはずみで別れた人に 今夜は逢えそな朝の蜘蛛 |
これが嘘なら舌でも切ると 廻わす屏風も雀がた |
三千世界の鴉を殺し 主しと添寝がしてみたい |
白鷺が 小首ょ傾げて 二の足踏んで やつれ姿の 水鏡 |
面の憎さよ あのきりぎりす 思ひ切れ切れ 切れと鳴く |
露のなさけを ただ身にうけて 恋の闇路を とぶ蛍 |
鳴くが情かよ 鳴かぬが情か 蝉とほたるの根比べ |
鳴くに鳴かれず 飛んでは行けず 心墨絵の ほとゝぎす |
泣かざなるまい 野に住む蛙 みずにあわずに いられよか |
庭の松虫音 をとめてさえ もしや来たかと 胸さわぎ |
猫にゃだまされ 狐にゃふられ ニャンでコンなに へまだろう |
軒の雫に 秋風しみて あわれもよおす 雁の声 |
花をうしろに思いを残し 時にせかれて 帰る雁 |
花や霞に 引止めさせて 帰しともない 春の雁 |
ひぐらしが 鳴けば来る秋 わたしは今日で 三晩泣くのに 来ない人 |
一人で寝るのは 寝るのじゃないよ 枕かついで 横に立つ |
ほととぎす 粋な声して ひとあしょ止めて 手をだしゃ お前は逃げるだろ |
惚薬 外にないか といもりに聞ば 指を輪にして みやしやんせ |
廻わし屏風の 鴛鴦ながめ 一人寝るなら 家でねる |
見たや逢いたや 山ほととぎす 姿ならずば声なりと |
雪をかぶって 寝ている竹を 来ては雀が ゆりおこす |
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